<美しい絵画〜心をいやす美と安らぎの広場>
        
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美術評論家・動く美術館長
川島 博による
≪第1回≫
【洋画】  「靴屋」  堀田 清治
  作品「靴屋」はプロレタリアートに心引かれた氏の人生を示唆する代表作の一点である。真摯な労働の姿に人生の価値と貴さを、そして信頼のきずなで結ばれた親子の姿に限りない人間愛を追求したものである。画面には、生命感みなぎる熱き鼓動と、木霊する労働への賛歌があり、そして漂う親子の情愛が満ちている。正に情熱、気迫、生気あふれた氏の心肝にふれる堂々たる風格をもった名作であろう。この作品にも見られるように、氏の画人としての歩みに終始大きな影響を与え続けたのが、近代絵画に新たな光を示したセザンヌであり、強靭にして激しい筆法のルオーであり、そして又、芸術の基盤を愛に求めたミレーの思想でもあった。
  氏は名声におもねる事もなく唯ひたすら、黙々として芸術の心理のみを、精悍をもって追求し続け乍ら孤高の生涯を送った異質の作家であった。従って氏の件品には、凄絶な迄に生動する痛烈な心の代弁が、或いは幽玄、幽寂の美の世界が、将又、石彫から吹き出し迫りくる霊気に入って霊心を画面に移行させた一連の摩崖仏から伝わる霊境の神秘が満ちあふれているのである。
  この様に堀田芸術は類例なき迫真の画境の連続であったが、この貴重な足跡を残した氏は、文字通り驚異の芸術家として日本洋画壇にその名をとどめたのである。
  洋画家。日展参与、新槐社代表をつとめ、日本の洋画壇を代表するフォーブ(野獣派)の巨匠であった。日展文部大臣賞ほか受賞歴多数。日洋展委員・動く美術館運営委員もつとめ、積極的な美術活動を展開し、多くの俊秀を育てた。
  一方、芸術院会員に推挙されながらも終始一貫して断り続けるなど信念の人でもあった。福井県出身。(1984年没85歳)


◇本頁の解説は美術公論社刊 「美術名鑑」 より抜粋させていただきました。